40頭の牛が放牧場で自由に過ごす、相馬牧場の1日に密着!
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「相馬さんの牧場そだち牛乳」を初めて飲んだとき「えっ、どうしてこんなにおいしいの?」と、一瞬で心をつかまれました。甘くて濃く、うまみがふわっと広がるようです。
「牛たちを一年中、放牧場で過ごさせていることが、理由の1つかもしれませんね」
そう答えたのは、牧場主の相馬行胤(そうま みちたね)さんです。その言葉を聞いて、さらに興味が湧きました。
この牛乳がどのように生産されているのかを探るため、2026年2月のある日、広島県神石高原町にある相馬牧場の1日に密着しました。
- 相馬牧場の1日のスケジュール
- 朝5時半、暗いうちから牛たちが列をなす
- 牧場には、つぶらな瞳の子牛がいる
- しぼった牛乳はさまざまな形に変わる
- 牛たちが幸せに過ごせるように気を配る
- 牛舎を掃除して清潔に保つ
- 休憩中は自宅に帰って過ごす
- 片付けと翌日の準備をして1日の仕事が終わる
相馬牧場の1日のスケジュール
5:30 搾乳(さくにゅう※)準備/エサやり/加工作業スタート
6:00 搾乳
7:00 子牛にミルク
9:00 お乳を出さない牛たちにエサやり
10:00 牛舎の掃除
12:00 休憩
15:00 子牛にミルク/放牧地に干し草をまく/翌日の準備
相馬牧場の特徴は、自然放牧と、搾乳(※お乳をしぼること)を朝に1回だけすることです。牛は全部で40頭ほど。小規模な牧場です。
朝5時半、暗いうちから牛たちが列をなす
まだ真っ暗な5時半。放牧場にいた牛たちが、搾乳のため次々と牛舎に入ってきます。
搾乳のときにもらえるエサを目当てに、牛たちは自分から進んで入ってくるのです。
「冬の間は放牧場にエサとなる草が非常に少なくなってしまうので、搾乳の時間にエサをしっかり食べさせています」
説明してくれるのは、杤木千秋(とちぎ ちあき)さん。相馬牧場に勤めて2年になる、26歳の牧場スタッフです。
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牛たちのエサは、乾燥した牧草と、イネを丸ごと刈り取って発酵(はっこう)させたもの(WCS:ホールクロップサイレージ)。
トウモロコシやペレットを混ぜた配合飼料も与えています。
牛たちが夢中で食べている間に、千秋さんは搾乳の準備を始めました。
「ハッカク、おはよう!」
千秋さんは牛に声を掛け、軽く背中のあたりをポンポンと叩いてから体に触れていきました。
「急に触って驚かせないように、背中を叩くんです」
乳首を消毒したあと、軽く手でお乳をしぼって状態を確認します。異常がなければ搾乳器を装着。牛の乳首は4つなので、搾乳器も4つでひとつです。
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しぼった牛乳はパイプラインを通って、タンクの中に入ります。
およそ20頭の牛たちのお乳をしぼり終えるまでに、1時間ほどかかりました。
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「搾乳が終わったらこの子たちを放牧場に帰し、代わりにお乳を出さない牛たちのグループ(若い牛や妊娠中、妊娠前の牛)を牛舎に入れてエサを食べさせます」
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「イネを発酵させたWCSは冬の間だけ与えるごちそうです。おいしい?あなたたち、本当にこれが好きだよねえ」
千秋さんは、WCS(ホールクロップサイレージ)の包みをほどいて牛たちに配る作業を繰り返しました。
「次のグループの子たちが、おなかを空かせていると思います。放牧場に少し牧草を持っていきますね」
重機に牧草を載せ、牛たちが待つ放牧場へと運びます。
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何か所かに分けて、牧草をまいています。
「一か所にまとめておくと、力の強い牛が独り占めしてしまうので、みんなが食べられるように、あちこちに置くんです」
牧場には、つぶらな瞳の子牛がいる
牛舎には、生後1か月ほどの子牛が3頭いました。子牛たちは朝と夕方の2回、2リットルずつ、溶かした粉ミルクを飲みます。
生まれてすぐの子牛には、母牛のお乳を飲ませます。出産直後の母牛のお乳は子牛の成長に必要な栄養をたっぷり含んだ、子牛のためのもの。
出産後1週間くらい経った母牛のお乳は、他の牛たちのお乳と一緒に集め、子牛には粉ミルクを与えるようになります。

母牛のお乳をしぼるのは、子どもを産んでからおよそ10~12か月の間だけです。(※)
※参考資料:一般財団法人 Jミルク find New 牛乳乳製品の知識「乳牛のライフサイクル」
牧場では子牛が生まれ、母牛がお乳を出す。人間はその大切なお乳を分けてもらっているのだなと、あらためて感じました。
相馬牧場には、ホルスタイン、ジャージー、ブラウンスイスの3種類の牛がいます。それぞれ乳質が違うので、全体のバランスを考えて飼育する牛の割合を決めているそうです。乳牛としてこの牧場に残す子牛以外は子牛市場に出され、他の牧場で育ちます。
しぼった牛乳はさまざまな形に変わる
相馬牧場で1日にしぼる牛乳はおよそ100リットル。この1部を低温殺菌して容器に詰め、「相馬さんの牧場そだちの牛乳」として販売します。また、ヨーグルトやプリンも作っています。
残りはどうするのだろうと思っていると、広島県酪農協同組合の集乳車がやってきました。他の牧場の牛乳と一緒に集められた原乳は、さまざまなメーカーの牛乳やアイスクリームなどになってみなさんの食卓に届きます。
「将来的には、自分たちのブランドで販売する量をもっと増やしたいですね。チーズづくりも検討中です」
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集乳が終わると、千秋さんはパイプラインや搾乳器の洗浄を始めました。
相馬牧場で働いているのは、相馬さんと千秋さん、入社半年になる小島也佳(こじま なりか)さんの3人です。
1人が牛たちの世話をする間、他の人がその日の加工作業を進めます。交替で休みを取れるよう、全員がどの作業もできるようにしているのです。
牛たちが幸せに過ごせるように気を配る
仕事がひと段落着いたところで、千秋さんは、牛たちを一頭ずつ紹介してくれました。
「この子はアラレ。退屈するとベロを出して遊ぶので、遠くにいてもすぐわかります。ボルツは1月に初めての出産をした新米ママ。まだ搾乳器に慣れていません。リヨンは一番古株です。先日乳頭をけがしてしまったので、獣医さんと相談しながら処置しています…」
すべての牛の性格や体調までしっかり把握していることに驚くと、千秋さんは笑顔で答えます。
「40頭ほどしかいないので、一頭一頭に気を配れるんです。私たちは牛たちの幸せを常に考えています」
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お乳を出す牛たちの食事が終わると、次のグループの牛たちに交替です。夢中になってエサを食べ始めました。
牛舎を掃除して清潔に保つ
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牛たちがすべて放牧場へ帰ったら、牛舎の掃除です。
集めたふん尿は発酵させて堆肥にします。これが放牧場の草の栄養となるのです。
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続いて、水でていねいに汚れを洗い流します。念入りな掃除で、牛舎はすっかりきれいになりました。これで午前の仕事は終わりです。
休憩中は自宅に帰って過ごす
千秋さんと也佳さんは、牧場からほど近い社宅に戻ってお昼の休憩を取ります。
相馬さんは牛乳やヨーグルトの配達のため、契約している産直市やお店へと出発しました。
片付けと翌日の準備をして1日の仕事が終わる
子牛のミルクの時間に合わせ、午後の作業がスタートしました。
牛たちが食べ残した牧草を放牧場に運んだり、子牛にミルクを飲ませたりと、千秋さんと也佳さんはくるくると働きます。
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翌日のエサの準備のため、WCSの包みをいくつかほどきました。これで1日の仕事は終わりです。
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1日お疲れさまでした!
相馬牧場の牛たちは、搾乳の時間以外は放牧地でのびのびと過ごし、1頭ずつ大切に見守られています。「相馬さんの牧場そだち牛乳」を飲むとほんわり幸せな気持ちになる理由が、なんとなくわかったような気がしました。
後編では、相馬牧場の牧場主とスタッフのお話を紹介します。
【今回訪れた場所】
相馬牧場(広島県神石郡神石高原町時安5332-2)🌐Webサイト




