【マネーの牛 vol.３】酪農家のための決算書講座！①貸借対照表［経営の基礎知りたい人向け］
今回も、“けんけん”と“マネーちゃん”が、酪農の「お金の実態」に迫っていくよ。
“お金がたくさんあれば健全”とは言い切れない、不思議な経営の世界……
会話形式でサクッと答えていくから、経営の基礎を知りたい人も、牛が好きな人も、気軽に読んでみてね！
登場人物
【けんけん】
- 酪農家業４代目
- 中小企業診断士
濃いめのコーヒーにジャージー牛乳を入れたカフェオレが大好き
【マネーちゃん】
- IT系会社員
- 簿記勉強中
いつか牧場経営するのが夢
- 牛の栄養バランス・会社の栄養バランス
- 決算書のうちの一つ、「貸借対照表」って何者？
- 資産と負債、流動と固定の違いを解説！
- 貸借対照表をざっくり見れば、どんな会社か、なんとなく分かる！
- 経営の健康具合を見分けるポイント！
- なんでコレを学ぶの？（酪農志望者にも生活者にも）
牛の栄養バランス・会社の栄養バランス
こんにちは！
突然だけどマネーちゃん、“牛はたくさんの方法で栄養をとっている”って知ってた？
突然だけどマネーちゃん、“牛はたくさんの方法で栄養をとっている”って知ってた？
たくさんの方法ってどういうこと？
ごはんを食べる以外に何かあるの？
ごはんを食べる以外に何かあるの？
牛は、草を分解するために微生物が体内で育っているんだけど、その微生物をたんぱく源として消化もしているんだ！
体の中で、これから栄養となる食べ物を育てているってこと…⁉
そうなんだよ！
だから、牛を健康的に飼育するには、外からの栄養だけじゃなく、体の中にある栄養を守ることも大切なんだよ
だから、牛を健康的に飼育するには、外からの栄養だけじゃなく、体の中にある栄養を守ることも大切なんだよ
へ～
そしてそれは、会社もそうなんだ
前回の記事で“健康な会社とは”っていう話題が出たけど、まさしく“外と中の栄養バランス”を見れば一目瞭然なんだ
前回の記事で“健康な会社とは”っていう話題が出たけど、まさしく“外と中の栄養バランス”を見れば一目瞭然なんだ
会社の栄養って、つまりお金のこと？
バランスってどういうことだろう・・・「利益が出ていれば健康」、じゃないの？
バランスってどういうことだろう・・・「利益が出ていれば健康」、じゃないの？
利益は一過性の場合もあるからね
たとえば、栄養の濃すぎる飼料を食べた牛が、その日だけ乳脂肪分高いミルクを生産できても、体を壊して長続きしなかったら元も子もないでしょ？
たとえば、栄養の濃すぎる飼料を食べた牛が、その日だけ乳脂肪分高いミルクを生産できても、体を壊して長続きしなかったら元も子もないでしょ？
まさか、会社にも“健康で長生きするお金のバランス”があるってこと！？
その通り！
会社の栄養バランスなんて、どこに書いてあるの？
それこそ今回のテーマ、決算書に載っているんだ！
決算書のうちの一つ、「貸借対照表」って何者？
決算書……！
何回読んでもピンとこないんだよね……
何回読んでもピンとこないんだよね……
難しそうに感じるのは最初だけ
知ればこれほど面白いものはないよ！
知ればこれほど面白いものはないよ！
ほんと？
あまり漢字使わないで説明してね！
あまり漢字使わないで説明してね！
分かった！
決算書にはまず、
①貸借対照表（たいしゃくたいしょうひょう）
②損益計算書（そんえきけいさんしょ）
などがあって…
①貸借対照表（たいしゃくたいしょうひょう）
②損益計算書（そんえきけいさんしょ）
などがあって…
漢字しかないよ！
ごめん！
めちゃくちゃ簡単だから、しがみついて聞いて！
めちゃくちゃ簡単だから、しがみついて聞いて！
せめて今日の説明は１つだけにして……
OK！
じゃあ貸借対照表だけ紹介するよ
じゃあ貸借対照表だけ紹介するよ
でも、苦手意識持つのも分かるな
実際の物を見てみるとこんな感じだしね……
実際の物を見てみるとこんな感じだしね……
分かりづらい……結局これ何なの……
分かりやすく説明するね
これは、“持っているものを、どうやって集めたか”を表しているんだ
これは、“持っているものを、どうやって集めたか”を表しているんだ
どういうこと？
こんな図を用意したよ
貸借対照表って、左右にバチっと分かれてるんだ
左に書いてあるのが、“資産”
これは、現金とか、トラクターとか、牛とか、会社に何があるかが書いてある
左に書いてあるのが、“資産”
これは、現金とか、トラクターとか、牛とか、会社に何があるかが書いてある
そして右は、どうやってお金を調達したかが書いてあるんだ
例えば、“負債”のところには銀行からの借り入れがある
“純資産”には、会社を始めるときに用意した自己資本とかがある
例えば、“負債”のところには銀行からの借り入れがある
“純資産”には、会社を始めるときに用意した自己資本とかがある
左と右、それぞれの合計は同じ額ぴったりになるんだ
え……
そうか……！
持っている資産はすべて、調達したお金で成り立っているってことなんだね！
持っている資産はすべて、調達したお金で成り立っているってことなんだね！
そうそう！
なんとなく分かったかな？
なんとなく分かったかな？
分かった……！
というか、それだけなの！？
それだけなんだよ！
難しくないでしょ?
難しくないでしょ?
資産と負債、流動と固定の違いを解説！
ちなみに、資産と負債は、それぞれ“流動資産”・“固定資産”、“流動負債”・“固定負債”にも分けられるよ
流動と固定って何が違うの？ 液体か固体 ？
たとえば、流動資産は、現金とか預金とか、すぐに使えるお金だね
あと、商品とか、1年以内にお金になるだろう物も含まれるよ
あと、商品とか、1年以内にお金になるだろう物も含まれるよ
固定資産は逆に、長くその物として持っておく資産だね
土地や建物の他に、酪農だとトラクターや牛も固定資産に入るんだ
土地や建物の他に、酪農だとトラクターや牛も固定資産に入るんだ
流動負債は、1年以内に支払ったり返済したりする必要がある負債
たとえば、牛の飼料を買ったとき、すぐ支払うというより、のちのち請求書が農場へ届いて、あとで支払うことになる
そういう支払いがあてはまるね
たとえば、牛の飼料を買ったとき、すぐ支払うというより、のちのち請求書が農場へ届いて、あとで支払うことになる
そういう支払いがあてはまるね
固定負債は、支払期限が“1年を超える”長期的な負債
借り入れとかがあてはまるね
借り入れとかがあてはまるね
なるほど……でも、これで結局何が分かるの？
それはね…
…ちょっと面白い遊びをしてみようか
…ちょっと面白い遊びをしてみようか
貸借対照表をざっくり見れば、どんな会社か、なんとなく分かる！
例えば、下の２つの貸借対照表を見てみて
さあ、どちらかは“酪農家”、
どちらかは“牛乳やアイスの販売店（商品を仕入れて売る店）”、
予想できるかな!?
さあ、どちらかは“酪農家”、
どちらかは“牛乳やアイスの販売店（商品を仕入れて売る店）”、
予想できるかな!?
えー、どうだろ……
Ａは固定資産が多いから、デカい機械とか建物がある……Ｂは流動資産が多いから、商品が多いのかな……？
Ａは固定資産が多いから、デカい機械とか建物がある……Ｂは流動資産が多いから、商品が多いのかな……？
勘が鋭い！
正解は、A＝酪農家、B＝牛乳やアイスの販売店
正解は、A＝酪農家、B＝牛乳やアイスの販売店
見た目の割合だけでも、なんとなく分かるもんだね！
いいね！
じゃあ、次は、下のＡとＢの貸借対照表、どっちが健康かな？
じゃあ、次は、下のＡとＢの貸借対照表、どっちが健康かな？
これは……どこが違うんだろ……
あ！ Ｂは流動資産が流動負債より少ない！
これって現金や商品より、すぐ支払わないといけないものが多いってことだよね。
やばくない！？
これって現金や商品より、すぐ支払わないといけないものが多いってことだよね。
やばくない！？
すごいねマネーちゃん！その通り！
健康で、毛艶が良いのは、Ａ会社だ！
正解です！
いろんな企業の貸借対照表見てみると、その会社の性格も分かって楽しいよ
たとえば下の画像だと、ＢよりもＡの方が“投資して成長を図るイケイケタイプ” みたいなのが、なんとなく分かるかな
たとえば下の画像だと、ＢよりもＡの方が“投資して成長を図るイケイケタイプ” みたいなのが、なんとなく分かるかな
Ａは、固定資産と固定負債が多いね……銀行から借り入れをたくさんして、トラクターとか買ったってことかな
経営の健康具合を見分けるポイント！
健康具合を見分けるポイントってあるの？
よく言われるポイントを最後に紹介するね！
“流動資産は、流動負債の倍くらい持っておこう”とか
“自己資本比率は最低20%欲しい”とか、目安としてよく言われるね
なるほど・・・・
ただ、どちらかと言うと大事なのは比べること！
「１年前に比べて、上がっているか下がっているか」
「同業他社や業界平均と比べて、高いか低いか」
こんな感じにね！
「１年前に比べて、上がっているか下がっているか」
「同業他社や業界平均と比べて、高いか低いか」
こんな感じにね！
農林水産省さんが「🔗農業法人の財務指標の標準的な水準とランク区分 （令和３年データ） 」で出していたり、
日本政策金融公庫さんが「🔗令和３年 農業経営動向分析結果」で分析したりするから、ぜひ見てみよう！
なんでコレを学ぶの？（酪農志望者にも生活者にも）
思ったより楽しかったけど、これがどう役立つのかな
酪農家や酪農志望者の場合は、貸借対照表が読めると
・自分の経営の良い面・悪い面がはっきり分かる
・短期的な支払いに困らないよう工夫ができる
・設備投資の計画が立てやすくなる
・自分の経営の良い面・悪い面がはっきり分かる
・短期的な支払いに困らないよう工夫ができる
・設備投資の計画が立てやすくなる
乳製品を楽しむ生活者は、酪農を応援したいと思ったとき
・牧場は長期資金＆重い固定資産で回っていると知れば、定期購入など継続的かつ長期的な応援が、牧場の現金安定に効くことが分かる
・“適正価格の判断材料”が増え、未来へ繋がる購買ができる
・牧場は長期資金＆重い固定資産で回っていると知れば、定期購入など継続的かつ長期的な応援が、牧場の現金安定に効くことが分かる
・“適正価格の判断材料”が増え、未来へ繋がる購買ができる
決算書がわかると、たしかに今までより未来への進み方が明確になる気がする！
次回は決算書の２つ目、“損益計算書”を解説するよ！
実はこれも、経営をパワーアップさせる強い武器になるんだ！
実はこれも、経営をパワーアップさせる強い武器になるんだ！
とっつきづらいけど、分かれば楽しいマネーの世界！
みんなは、牛乳に支払ったお金を、酪農家さんにどう使ってほしいかな？
貸借対照表を見てわかったように、お金をどのように活用するかは無限の可能性があるんだ！
次回『決算書の読み方講座② 損益計算書』で、よりリアルなマネーの流れを紹介するよ！
お楽しみに！
この記事の筆者
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