【マネーの牛 vol.4】酪農家のための決算書講座!②損益計算書[経営の基礎を“数字”でつかむ]
前回の“貸借対照表”では、会社の健康具合を見たね!
今回は、実際に“どれだけ稼いで・どれだけ使ったか”を表す「損益計算書」 を見てみよう!
酪農のマネーがどう動いているか分かると、牛乳の味も奥深く感じるかも!?
登場人物

【けんけん】
- 酪農家業4代目
- 中小企業診断士
濃いめのコーヒーにジャージー牛乳を入れたカフェオレが大好き

【マネーちゃん】
- IT系会社員
- 簿記勉強中
いつか牧場経営するのが夢
損益計算書って?

さあ、今日は損益計算書を読み解こう!
これは、簡単に言うと“1年間でいくらもうけたか”を見る成績表 だよ
これは、簡単に言うと“1年間でいくらもうけたか”を見る成績表 だよ
いい疑問だね!
それぞれの項目にどんな意味があるか、損益計算書を図で説明するよ
それぞれの項目にどんな意味があるか、損益計算書を図で説明するよ

損益計算書の一番上にくるのが、“売上”
生乳など生産物を販売して得たお金だね
生乳など生産物を販売して得たお金だね
“売上”から“売上原価”を引いたのが“売上総利益” だよ
売上原価っていうのは、商品を作るのにかかった経費
酪農の場合で言うと、牛のご飯代や、飼育スタッフの人件費も入るね
売上から売上原価を引くと、売上総利益が出る
売上原価っていうのは、商品を作るのにかかった経費
酪農の場合で言うと、牛のご飯代や、飼育スタッフの人件費も入るね
売上から売上原価を引くと、売上総利益が出る
次に、“販売費・一般管理費 ”を引くと“営業利益”が分かる
“販売費・一般管理費 ”って?
商品をお客様に届けるまでにかかった経費だね
酪農の場合だと、牛の世話をする人以外……たとえば経理などの事務仕事をする人件費や、保険料もここに入るね
酪農の場合だと、牛の世話をする人以外……たとえば経理などの事務仕事をする人件費や、保険料もここに入るね
そのあと、国(農林水産省)や都道府県などからもらえる補助金を足して、支払利息など営業外費用を引くと“経常利益”が出てくる
なるほど!
最後に、特別利益と特別損失と税金をなんやかんや足し引きして“当期純利益”で完成!
最後ちょっと説明省いてないかな!?
特別利益とか特別損失の話は、結構ややこしいんだよね~…
…また今度詳しく解説するよ!
…また今度詳しく解説するよ!
とりあえず今日は経常利益まで分かっていればいいの?
OK!
ここからもっと楽しくなるよ
売上から経常利益までを使って、一緒に財務分析してみよう!
ここからもっと楽しくなるよ
売上から経常利益までを使って、一緒に財務分析してみよう!
クイズ! どっちが良い経営?
さあクイズです!
自分の牧場 は売上1, 000万円で、売上原価が400万円でした
Aさんの牧場は、売上同じだけど、売上原価が500万円でした
どっちが“良い経営”かな?
自分の牧場 は売上1, 000万円で、売上原価が400万円でした
Aさんの牧場は、売上同じだけど、売上原価が500万円でした
どっちが“良い経営”かな?

利益が多い“自分の牧場”だね!
正解!
じゃあ、“何が良くて”利益が多く残ったのかな?
じゃあ、“何が良くて”利益が多く残ったのかな?
売上が同じっていうことは、同じ量・同じ質のミルクを生産しているってことだよね
それでいて売上原価が少ない……
自分たちで牛のご飯を作ることで、コストを抑えながら品質の高い飼料を用意できているのかな
あと、飼育スタッフ皆さんの作業効率が良いとか!
それでいて売上原価が少ない……
自分たちで牛のご飯を作ることで、コストを抑えながら品質の高い飼料を用意できているのかな
あと、飼育スタッフ皆さんの作業効率が良いとか!
良い考え方だね!
売上総利益÷売上で出てくる指標を“売上高総利益率”って言うんだけど、これが高いということは、“低コストで良いものが作れている”という意味だね
売上総利益÷売上で出てくる指標を“売上高総利益率”って言うんだけど、これが高いということは、“低コストで良いものが作れている”という意味だね
クイズ! 何を改善すべき?
次に、“営業利益”の差を見てみよう!
自分の牧場 は、営業利益が100万円
Aさんの牧場は営業利益が200万円だとする
自分の牧場 は、営業利益が100万円
Aさんの牧場は営業利益が200万円だとする

※販管費=販売費・一般管理費の略
あ、負けてる!
何を改善すべきかな?
販売費・一般管理費は、事務や経費の人件費とかだから……うーん、どうしたらいいんだろう
こういう時は、良い事例を見てみよう!
FAXやメール、紙の帳簿など別々の形で集まる情報って、まとめ づらいよね。
とあるカフェの店長が、『情報を全てWebで一元管理した結果、事務作業が半分の時間でできるようになった』って言ってたよ!
FAXやメール、紙の帳簿など別々の形で集まる情報って、まとめ づらいよね。
とあるカフェの店長が、『情報を全てWebで一元管理した結果、事務作業が半分の時間でできるようになった』って言ってたよ!

酪農も、日々いろんな書類扱うって聞くなあ……
以前の記事でも言ったけど、利益を多く残せている農家は“とにかく全ての経費を1円でも下げる努力をしている”
『酪農家だからデジタル化なんて難しい』なんて思わず、できることから効率化することが大切なんだ!
『酪農家だからデジタル化なんて難しい』なんて思わず、できることから効率化することが大切なんだ!
数字をどう活かすか
さて、損益計算書バッチリかな?
良い感じ!
決算書って、“過去の結果”を示すだけじゃなくて、改善のヒントをくれる“未来への指標”でもあるんだね!
決算書って、“過去の結果”を示すだけじゃなくて、改善のヒントをくれる“未来への指標”でもあるんだね!
最高のまとめ!
今日は“自分の牧場とほかの人の牧場”で比べてみたけど、“同じ会社の前年と今年”とか、“同じ会社のここ10年の変化”も見てみるとまた面白いよ
今日は“自分の牧場とほかの人の牧場”で比べてみたけど、“同じ会社の前年と今年”とか、“同じ会社のここ10年の変化”も見てみるとまた面白いよ
“前年より何%上がったか・下がったか”……たしかに成長が実感できそう!
そう、経営は“点”じゃなく“線”で見るんだ
1年の黒字・赤字より、10年通して利益を出せるか
そこが経営者の腕の見せどころだよ
1年の黒字・赤字より、10年通して利益を出せるか
そこが経営者の腕の見せどころだよ
なるほど
次に牛乳を飲むときも 、なんか味わい方変わりそう……
次に牛乳を飲むときも 、なんか味わい方変わりそう……
気になった人は、ぜひ今日得た知識をもとにデータを調べてほしいと強く思うな!
いつになく語気が強いね!
例えば、農林水産省が令和6年に出した「農業法人の財務指標の標準的な水準とランク区分(令和3年データ)」
農林水産省「農業法人の財務指標の標準的な水準とランク区分(令和3年データ)」(令和6年6月)
これを見てみると、酪農家の経営が数値でランク付けされているんだけど、“低位~高位”の中で“酪農業の中位”は

営業利益率、経常利益率どっちも赤字が基準内に入っているよ!?
ちなみに財務省が出している令和3年度“全産業”での売上高営業利益率を計算すると【3.7%】、経常利益率は【5.8%】だね
報道発表「年次別法人企業統計調査(令和3年度)」財務省(令和4年9月1日)
やっぱり酪農は大変なんだね……
ただ、希望はあるよね
え?
たとえばさ、もし酪農が赤字で、他の産業も赤字だったら、打つ手がないように思えちゃう
ただ、日本において利益を出している他の産業があるっていうことは、それを学べば、酪農の伸びしろが見えてくるかもしれないよ
ただ、日本において利益を出している他の産業があるっていうことは、それを学べば、酪農の伸びしろが見えてくるかもしれないよ
そっか、カフェの例が牧場に活かせるように、やれることはあるかもしれないんだね!
その通り!
実際、酪農家自身も、酪農に関わるたくさんの事業者みんなも、どうにかこうにか試行錯誤してる
その成果がこれから数値でどう現れてくるか、楽しみだね
実際、酪農家自身も、酪農に関わるたくさんの事業者みんなも、どうにかこうにか試行錯誤してる
その成果がこれから数値でどう現れてくるか、楽しみだね
うう……今年の酪農家の経常利益率が向上してたら、感動で泣いてしまうかも……
まとめ
さて、これで決算書のうち2つが分かったね!
次はどんなことを解説するの?
実は、“貸借対照表”と“損益計算書”、これを組み合わせることで更に面白いことが分かるんだ!
次回は、よりレベルの高い財務分析に入るよ!
次回は、よりレベルの高い財務分析に入るよ!
ひとことで「黒字」「赤字」と言っても、いろんな種類のマネーが絡んでいて、
数年分の損益計算書を比較することで会社の成長を把握したり、
ほかの業種と比較したりすることで見えてくるものがあるんだね!
次回『決算書の読み方講座③ もっと! 財務分析』を読めば、もはやあなたも投資家レベル!?
お楽しみに!





