【マネーの牛 vol.2】 「酪農家は何を売って何を買ってる?」マネーの正体へ迫る![経営の基礎知りたい人向け]
やあ、みんな!
今回の「マネーの牛」は、けんけんとマネーちゃんが、酪農の「お金の正体」に迫っていくよ。
「酪農家って、実際どんなふうにお金を稼いで、どんなものを買ってるの?」
そんな素朴な疑問に、会話形式でサクッと答えていくから、経営の基礎を知りたい人も、牛が好きな人も、気軽に読んでみてね!
登場人物

【けんけん】
- 酪農家業4代目
- 中小企業診断士
濃いめのコーヒーにジャージー牛乳を入れたカフェオレが大好き

【マネーちゃん】
- IT系会社員
- 簿記勉強中
いつか牧場経営するのが夢。
酪農家の “売り物” と“買い物”って?

こんにちは! “けんけん”、こと、須藤健太です
「酪農って、年収1,000万円でも2,000万円でも可能です」
——前回そう書いたら、「どう稼ぐの?」「お金の流れは?」とたくさんの反応をいただきました
今日は、頼れる相棒「マネーちゃん」と一緒に、『酪農のマネーの正体』を会話でサクッと解説します
「酪農って、年収1,000万円でも2,000万円でも可能です」
——前回そう書いたら、「どう稼ぐの?」「お金の流れは?」とたくさんの反応をいただきました
今日は、頼れる相棒「マネーちゃん」と一緒に、『酪農のマネーの正体』を会話でサクッと解説します

けんけん、前回の記事読んだよ!
“酪農でも年収1,000万や2,000万いける”って本当?
目を引くタイトルつけて安易に閲覧数稼ぐ手法はどうかと思うな!
“酪農でも年収1,000万や2,000万いける”って本当?
目を引くタイトルつけて安易に閲覧数稼ぐ手法はどうかと思うな!

語気が強いよ、マネーちゃん

事実に近づくため、今日は『そもそも酪農家は何を売って、何を買っているのか』を知ろう!

牛乳を普段買っているみなさまも、「何で乳製品って最近値上がりしてるんだろう?」って関心高まっていると思います
そこで、まず!
酪農のお金の流れを超シンプルに表しました!
そこで、まず!
酪農のお金の流れを超シンプルに表しました!


乳価(にゅうか)って、なに?

乳価はね、「酪農家が生乳1kgを出荷したときにもらえる単価」のこと
お店に並んでいる牛乳の小売価格じゃなくて、原料としての卸値だと思ってくれたらOK!
お店に並んでいる牛乳の小売価格じゃなくて、原料としての卸値だと思ってくれたらOK!

へー
そこから牛のごはん代とか色々引かれて利益…
…そっか、売上が全部年収になるわけじゃないよね!
そこから牛のごはん代とか色々引かれて利益…
…そっか、売上が全部年収になるわけじゃないよね!

売上は『年商(ねんしょう)』。
『年収(ねんしゅう)』とは違うね~~
じゃあ続いて、売上と利益を具体的に説明するね
『年収(ねんしゅう)』とは違うね~~
じゃあ続いて、売上と利益を具体的に説明するね
売上と利益のカラクリ、教えます!

まずは売上について!
「ミルクの量×乳価」のうち、「ミルクの量」からいこう。
牛1頭から1日どのくらいミルクをいただけるか、マネーちゃんは知っている?
「ミルクの量×乳価」のうち、「ミルクの量」からいこう。
牛1頭から1日どのくらいミルクをいただけるか、マネーちゃんは知っている?

どのくらいだろ……1日5リットルくらい?

データ※を見ると、1日あたり約25kgだね
※1日あたり約25kg:農林水産省 畜産 『畜産・酪農に関する基本的な事項 』p3、2025年 9月 「乳用牛の1年間の生産生乳量は平均で約9,000kg(略)。平均搾乳日数は360日程度」より算出


すごい!!
じゃあ「単価(乳価)」は?
じゃあ「単価(乳価)」は?

酪農家の受取価格である「総合乳価」は、おおむね110〜120円/kgで推移してきたよ※
(地域によって差が激しいので、まずはざっくり平均で勘弁してね)
(地域によって差が激しいので、まずはざっくり平均で勘弁してね)
※総合乳価の推移(全国):農林水産省 「農業物価統計調査 / 農業物価統計調査-令和2年基準- / 確報 令和6年農業物価統計」(統計局e-Stat)

では、売上をまとめてみよう!
たとえば牛さん50頭からミルクをいただく牧場があったとする
乳価については、110~120円/kgの真ん中の、115円/kgで考えてみようか
50頭×32kg×115円=18.4万円/日、月あたりだと約552万円、年間だと約6,624万円の売上
になるね
たとえば牛さん50頭からミルクをいただく牧場があったとする
乳価については、110~120円/kgの真ん中の、115円/kgで考えてみようか
50頭×32kg×115円=18.4万円/日、月あたりだと約552万円、年間だと約6,624万円の売上
になるね

わかりやすい!

で、ここからエサ代・人件費・電気・修理・ローン返済などがドンと出ていく
生産費の統計では生乳100kgあたりの総コストが約9,669円、そのうち飼料費は最も重くて5割前後を占めがち※、ってデータがある
生産費の統計では生乳100kgあたりの総コストが約9,669円、そのうち飼料費は最も重くて5割前後を占めがち※、ってデータがある
※生産費のなかで飼料費が占める割合:農林水産省 「農業経営統計調査 令和4年 牛乳生産費」令和5年12月8日公表

生乳100kgの総コストが約9,669円ってことは、売上が100kg×115円=11,500円
総コスト9,669円引くと、利益は1,831円
総コスト9,669円引くと、利益は1,831円

……100kgのミルクで利益1,831円って本当!?
※赤字牧場58.9%:中央酪農会議アンケート「日本の酪農家 が1万戸割れ」(2024年12月2日)
経費の壁!利益はどこへ消える?

けんけん、やっぱり“酪農は年収1,000万円可能!”なんて無責任に言っちゃダメだよ

いや、僕は無責任に言ったつもりはないよ
ちゃんと、持続性高い酪農をやる秘訣はあるんだ
ちゃんと、持続性高い酪農をやる秘訣はあるんだ

どうやって利益は上げられるの?

シンプルに言えば、
①売上を上げる
②経費を下げる
のどちらかをすればいい
ちなみにマネーちゃん、売上が100円上がるのと経費が100円下げるの、どっちが利益増えるかな?
①売上を上げる
②経費を下げる
のどちらかをすればいい
ちなみにマネーちゃん、売上が100円上がるのと経費が100円下げるの、どっちが利益増えるかな?

どっちも同じ!

そういう場合もあるけど、たいがい「経費を100円下げる」方が利益が上がるんだよね

なんで?

売上を上げる時っていうのは、一緒に経費も上がりがちだからだね
たとえば牛を増やして売上を100円上げたとする
その場合、ごはんの量も増えるから、実際残る利益は100円より低い
一方で、経費を100円下げられた場合は、そのまま利益を100円ゲットできる
たとえば牛を増やして売上を100円上げたとする
その場合、ごはんの量も増えるから、実際残る利益は100円より低い
一方で、経費を100円下げられた場合は、そのまま利益を100円ゲットできる

たしかに!
高所得農家の秘密は“まんべんなく経費カット”

じゃあどの経費を下げるのが一番利益上がるのかな

農業利益創造研究所さんのデータ※を見ると、「高所得の農家はすべての費用がまんべんなく抑えられている」ことが分かるね
酪農だと飼料が注目されがちだけど、費用を網羅的にチェックするのが重要なんだね
酪農だと飼料が注目されがちだけど、費用を網羅的にチェックするのが重要なんだね
※AgriweB 高所得農家の経営内容を分析_シリーズ『農業会計ビッグデータから見える!高所得農業経営とは』Vol.2 一般社団法人 農業利益創造研究所 理事長 平石 武 氏著 2022年01月19日公開
牛も会社も“健康”が大事!

うーん、もっと魔法みたいに利益上がる策ないの?
なんだか、マネーのことより、牛の勉強をしたり現場で働いたりした方が、よっぽど良い酪農家になれそう
なんだか、マネーのことより、牛の勉強をしたり現場で働いたりした方が、よっぽど良い酪農家になれそう

良い疑問だね!
たしかに牛のことを理解したり現場に入ったりするのは大事
ただ、それと同じくらいマネーの勉強も重要なんだよ
牛と同じように、会社も生き物って考えたら分かりやすいかな
たしかに牛のことを理解したり現場に入ったりするのは大事
ただ、それと同じくらいマネーの勉強も重要なんだよ
牛と同じように、会社も生き物って考えたら分かりやすいかな

会社も生き物?

そう!
たとえば牛って、ごはんがあれば健康に過ごせる訳じゃないよね
牛舎の環境も大事だし、個体差もあるから毎日の観察が非常に重要
たとえば牛って、ごはんがあれば健康に過ごせる訳じゃないよね
牛舎の環境も大事だし、個体差もあるから毎日の観察が非常に重要

マネーちゃん、健康な牛の特徴分かる?

目がきれい!
毛がツヤツヤ!
太りすぎてなくて瘦せすぎてもいない感じ!
毛がツヤツヤ!
太りすぎてなくて瘦せすぎてもいない感じ!

いいね~~

会社はどういう状態が、「健康な会社」なの?

すばらしい質問!
では、その答えを次回の『健康な会社とは? 決算書の読み方講座!』で解説するよ!
では、その答えを次回の『健康な会社とは? 決算書の読み方講座!』で解説するよ!

決算書が読めれば、いろんな企業を「ここは毛ヅヤが良い会社だ!」、「ここは少し太りすぎかも」と分かるようになるよ

ほんと~~~???
決算書……よく分かんないけど、楽しみになってきた!
決算書……よく分かんないけど、楽しみになってきた!
どうだった?
酪農家のお金の流れ、ちょっと身近に感じられたかな?
牛の健康も会社の健康も、日々バランスよく積み重ねることが大事。
次回は『健康な会社とは?決算書の読み方講座!』で、さらに深掘りしていくからお楽しみに!
参考(本文中で使った主要データの出典)
- 1日あたり約25kg:農林水産省 畜産 『畜産・酪農に関する基本的な事項 』p3、2025年 9月 「乳用牛の1年間の生産生乳量は平均で約9,000kg(略)。平均搾乳日数は360日程度」より算出
- 総合乳価の推移(全国):農林水産省 「農業物価統計調査 / 農業物価統計調査-令和2年基準- / 確報 令和6年農業物価統計」(統計局e-Stat)
- 生産費のなかで飼料費が占める割合:農林水産省 「農業経営統計調査 令和4年 牛乳生産費」令和5年12月8日公表
- 飼料費比率の目安(牛で4〜6割):農林水産省畜産局「畜産・酪農をめぐる情勢」令和7年1月
- 赤字牧場58.9%:中央酪農会議アンケート「日本の酪農家 が1万戸割れ」(2024年12月2日)
- 高所得農家の費用:AgriweB 高所得農家の経営内容を分析_シリーズ『農業会計ビッグデータから見える!高所得農業経営とは』Vol.2 一般社団法人 農業利益創造研究所 理事長 平石 武 氏著 2022年01月19日公開