牧場が作る牛の「ごはん」!牛と畑がつくる、おどろきの無限ループ
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こんにちは、うしミルの原です。
30歳過ぎにITの会社から酪農の世界に転職し、今は千葉県館山市の須藤牧場で農場長として約100頭の牛たちと向き合う日々を送っています。
転職するまで農業や食べ物がどうやって作られているのか、ほとんど知らずに育った私。
牧場に来て、毎日たくさんの驚きに出会っています。
前回は、牛たちのごはんとなる牧草や、おかずとなる配合飼料のお話しに加えて、補助的に牛たちが食べている醤油粕(しょうゆかす)やおからなど、私たちの食卓と牧場をつなぐ「エコフィード」のお話をしました。
🌐30歳まで農業を知らなかった私が驚いた!牛の「ごはん」から見る、身近なつながりを大切にする工夫
今回は、前回の記事でも少し触れた牛のごはん、私の牧場で手作りしている「コーンサイレージ」のお話です。
道ばたの「白いロール」、見たことありますか?
牧場の近くや田舎道を車で走っていると、畑の隅に白いビニールで丸く巻かれた大きなかたまりが並んでいるのを見たことはないでしょうか?
あれ、実は牛のごはんです。
正式には「ロールベールサイレージ」といって、牧草やトウモロコシなどを刻んだものを水分調整したあと丸めてビニールで包み、発酵(はっこう)させた保存食です。
全国の牧場でよく使われている方法で、田舎の風景としておなじみの光景ですね。
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須藤牧場では、こうして作っています
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私の働く須藤牧場では、「バンカーサイロ」と「スタックサイロ」という方法でサイレージを作っています。
バンカーサイロは、地面に作ったコンクリートのプールのようなもの。
スタックサイロは、地面の上に直接積み上げる方法です。
どちらも、細かく刻んだトウモロコシをぎゅっと詰め込んで、上からシートをかぶせて密封します。

密封することで空気がなくなり、乳酸菌が働いて発酵が始まります。
実はこの乳酸菌、市販されているものを加えることもありますが、空気中にただよっているその土地ごとの乳酸菌が自然に働くこともあります。だから同じトウモロコシを使っても、牧場によってサイレージのにおいが少しずつ違うんです。
まるでお味噌やワインが、作る場所によって風味が変わるのと似ていますね。
牧場ごとに「我が家の味」があるというわけです。
初めてサイロを開けたとき、私は思わず「うわっ」と声が出ました。
むわっとした酸っぱいにおいが鼻をついて、色は茶色がかっていて、見た目も正直「これ、大丈夫?」と思ったほどです。
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でも牛たちは違います。
サイレージが運ばれてくると、我先にと顔を突っ込んで、むしゃむしゃと気持ちよさそうに食べるんです。
なぜ茎も葉っぱも全部使えるの? 牛の「4つの胃」の力
コーンサイレージのすごいところは、トウモロコシの実だけでなく、茎も葉っぱも丸ごと全部使えることです。

人間がトウモロコシを食べるときは主に実の部分だけですよね。茎や葉っぱは捨ててしまいます。
でも牛の場合は違います。
牛には胃袋が4つあります。
人間の胃は1つですが、牛は4つの胃を使って、繊維がたっぷりの茎や葉っぱまでしっかり消化することができます。一度飲み込んだものをまた口に戻して、もぐもぐと噛(か)み直す「反芻(はんすう)」という動きも、この消化を助けています。
つまりコーンサイレージは、牛の体のしくみに合った形で、トウモロコシという作物をまるごと活かすことができるごはんなのです。
「ごはんを作っている」ことを、知っていましたか?
牧場というと、どんなイメージがありますか?
「牛がのんびり草を食べている」「毎日ミルクをしぼっている」―そんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
かつての私もそうでした。
ITの会社で働いていたころ、牧場とは「牛乳をしぼる場所」だと思っていました。
でも実際に牧場で働いてみると、酪農家の仕事はミルクをしぼるだけではありませんでした。
牛のごはんを管理する、健康を見守る、牛舎を清潔に保つ、ふんの処理をする、そして自分たちの手でごはんを作る。
コーンサイレージはその代表例です。
春に種をまき、夏に育て、秋に収穫し、発酵させて、1年間の牛のごはんとして使う。
この一連の作業を、私の牧場ではスタッフが自分たちでやっています。
「牧場って、ミルクをしぼる以外にこんなにいろんなことをしているんだ」。
働き始めて何年経っても、その気持ちは変わりません。
眠っていた田んぼを起こして、牛と畑がつくる「無限ループ」
須藤牧場でトウモロコシを育てているのは、実は牧場のすぐ近く、元・田んぼだった土地です。
かつてそこではお米が作られていました。
でも農家の高齢化や担い手不足などの理由で、田んぼとして使われなくなったのです。
そのまま放置すると「耕作放棄地」になってしまいます。
草が生い茂り、虫や獣が増え、周辺の農地にも影響が出てしまう。
日本全国で問題になっていることのひとつです。
須藤牧場はその土地を借りて、トウモロコシを育てています。
眠っていた田んぼが、牛のごはんを作る畑となり、また地域の資源として動き始めるのです。
そしてその畑にまく肥料は、牛のふんから作った堆肥(たいひ)です。
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牛がごはんを食べる → ふんが出る → 堆肥にする →畑にまく → トウモロコシが育つ → 牛のごはんになる → また牛がごはんを食べる…
牛と畑が、ぐるぐると無限ループで循環しています。
牛の堆肥は重く、遠くまで運ぶのはコストがかかります。
収穫したトウモロコシも、鮮度が大切なのですぐに刻んで詰め込む必要があります。
牧場と畑が近いからこそ、この循環が成り立っています。
こうした取り組みは須藤牧場だけではありません。
地域によっては、田んぼで人間用の「食用米」ではなく家畜用の「飼料用米」を育てて、近くの牧場に取引している農家さんもいます。
田んぼと牧場が協力することで、地域の農地を守りながら、牛のごはんも地元で確保できる。
これを「耕畜連携」と呼んでいて、こういった仕組みが、日本各地で少しずつ広がっています。
「牧場が地域の農地を守っている」なんて、牧場で働く前の私には想像もできませんでした。
地域の牧場が、地域の土地と一緒に回している循環。
スーパーで牛乳を手に取るときに、この記事のことを思い出してもらえたらうれしいです。
牛のふんって、どうなるの?
この循環を支えているのが、牛のふんから作る「堆肥」です。
トウモロコシを育てる畑に、牛の堆肥をまく。
牛が食べて、ふんが出て、また畑に返っていく。
この無限ループをもっと深く知るために、次回は牛の堆肥がどうやって作られ、どんな力を持っているのかをたっぷりお伝えします。
お楽しみに!
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