30歳まで農業を知らなかった私が驚いた!牛の「ごはん」から見る、身近なつながりを大切にする工夫

ウシはエコの達人?牛のごはん 私たちのごはん 意外なつながり!

こんにちは、うしミルの原です。

30歳過ぎに、IT企業から酪農の世界に転職し、今(2026年6月現在)は千葉県館山市の須藤牧場で、農場長として約100頭の牛たちと向き合う日々を送っています。

30歳になるまで、農業や食べ物がどうやって作られているのか、ほとんど知らず育った私。

酪農の世界に飛び込んで、毎日たくさんの驚きに出会っています。
牛のごはん1つをとっても、社会や環境とのつながりを身をもって知るようになり、本当に酪農は「学びの宝庫」だと実感する毎日です!

多くの牧場では、えさ屋さんからごはんを買ったり、自分たちで作ったりして、毎日ブレンドして牛に与えます。
私の働く牧場では、搾乳(さくにゅう)中の55頭の牛たちが1日に食べるごはんは合計でなんと約2,100キログラム
1頭あたり、1日に約40キログラムもの量を食べている計算になります。

その大量のごはんには、一体何が入っているのでしょうか

須藤牧場の牛たち ごはんは何を食べている?

一般的な牛のごはん:草と配合飼料

まずは、牛のごはんとして一般的な2つをご紹介します。

1.主食となる草(輸入の乾草(ほしくさ)など)

乾草
※この乾草は須藤牧場で使用しているものではなく、一般的なイメージです
  • イネ科牧草(「チモシー」、「イタリアンライグラス」など)
  • マメ科牧草(「アルファルファ(ルーサン)」など)の乾草

牛はもともと草食動物。胃袋を健康に保つために草が欠かせません。

乾草は専門用語で「粗飼料(そしりょう)」という分類に入ります。粗飼料は牧草やワラなどで、繊維質をたくさん持っている牛のごはんのことです。繊維質は牛の胃の働きを元気にするので、健康を維持するためには欠かせない、基礎的で大切な、牛にとって「主食」となるごはんです。

でも、日本の牧場で55頭分が食べる草を育てるのはとても大変です。
そのため、私の働く牧場では外国産の乾草を買って与えています。

2.栄養満点のおかず、配合飼料

配合飼料
※この配合飼料は須藤牧場で使用しているものではなく、一般的なイメージです

おいしいミルクをたくさん出すためには、草だけでなくエネルギー源となる穀物(こくもつ)も必要です。穀物を含む牛のごはんは、専門用語で「濃厚飼料」という分類になります。
牧場では、トウモロコシなどが混ざった「配合飼料」という、色々なものが混ざったものを使います。
「配合飼料」はタンパク質や炭水化物などが含まれていて、主食の乾草の合間にたべる、栄養満点のおかずのような位置付けです。

実はこの配合飼料も、ほとんどを外国産に頼っています。


牛の健康を保ち、おいしいミルクを出すためには、「粗飼料」と「濃厚飼料」をバランスよく、十分に食べてもらうことが大切です。

牧場の挑戦:身近な資源と手作りのごはん

「草も穀物も、外国からの輸入ばかりなの?」と思った方もいるかもしれません。

そこで私の牧場では、なるべく輸入に頼らず、身近な資源をいかすための工夫をしています!それが次の2つです。

3. 牧場で作る手作りのごはん(自給飼料):コーンサイレージ

コーンサイレージ
※この写真は須藤牧場のものではありませんが、一般的なコーンサイレージです

外国から買うのではなく、自分の手で畑をたがやし、トウモロコシを育て、実だけではなく茎や葉っぱも細かくして発酵(はっこう)させたごはんです。

コーンサイレージは繊維質が多く含まれる「粗飼料」に分類されます。

コーンサイレージの詳しいことは、次回の記事でご紹介します!

4. 日本生まれのエコなごはん(食品製造の残りもの)

牛のごはんとしては、乾草やコーンサイレージなどの「粗飼料」や、穀物などの「濃厚飼料」が中心ですが、補助的に牛に与えているものがあります。

  • 醤油粕(しょうゆかす):千葉県の醤油工場から

醤油粕(しょうゆかす):千葉県の醤油工場から

   

  • 脱脂米ぬか:千葉県のこめ油工場から

脱脂米ぬか:千葉県のこめ油工場から

   

  • 豆皮(まめかわ / 大豆の皮):千葉県や茨城県の納豆工場などから

豆皮(まめかわ / 大豆の皮):千葉県や茨城県の納豆工場などから

   

  • ビール粕:山梨県のビール工場から

ビール粕:山梨県のビール工場から

   

  • 豆腐粕(おから):館山市内のお豆腐屋から

豆腐粕(おから):館山市内のお豆腐屋から

   

これらはすべて私たちの食卓にとても身近なものばかり。お醤油や米油、納豆やビールなどを工場で作るときに出る「残りもの」です。

私たちが普段食べているものを作るときに生まれた「残りもの」が、私の牧場にいる牛たちのごはんになり、牛がそれをおいしいミルクに変えて、また私たちの食卓へと戻ってくる 。

このように、食品の残りものを家畜のごはんとして再利用することを「エコフィード」と呼びます。エコフィードは、私たちの食卓と牧場をぐるっとつなげる、素敵なリサイクルのバトンとなっています。

素敵なリサイクルのバトンの図
イラスト内のキャラクターデザイン(牛(左)、パイナップルの皮、しょうゆのしぼりかす、だいこん、しょうゆ工場、ミルク、バター)は「milushi みるし」ライターであるミルクマイスター高砂さん!
ミルクマイスター高砂さんが理事長、原が副理事長を務める「NPO法人酪農乳業ネットワーク協会うしミル」の「食と農のキャラクター」から使用しました。

しかも、私の牧場がある千葉県など、都市のまわりには食品工場がたくさんあります。
遠くの外国から船でえさを運ぶのに比べて、近くの工場からエコフィードを運ぶことは、トラックの移動距離が短いため、排気ガスなどによる環境への負担をぐっとおさえることができます。

牛乳を作るだけじゃない、牧場のもうひとつの顔

毎日ごはんをもりもり食べている牛たちは、地域の環境を守るエコなパートナー
毎日ごはんをもりもり食べている牛たちは、地域の環境を守るエコなパートナー

30歳まで食や農業についてほとんど知らなかった私は、「牧場=ただ牛乳をしぼる場所」だと思っていました。

でも実際に働いてみると、牧場は牛乳をしぼっているだけではなく、食品ロスの削減や環境を守る資源循環を実践(じっせん)する役割も担っていることに気づきました。

毎日ごはんをもりもり食べている牛たちは、地域の環境を守るエコなパートナーというわけですね。

牛たちから学んだ、地域の牧場と「身近な食」の大切さ

酪農はまさに学びの宝庫!

牛のごはん1つをとっても、こんなに深い世界が広がっていました。
地域に牧場があることの価値や、「エコフィード」という素晴らしい仕組み。
私も酪農の世界に飛び込んで、初めて知ることばかりでした。

これを読んでくれた皆さんにも、私たちの身近にいる家畜や、地域の牧場の役割を少しでも意識してもらえたらうれしいです。

そして、これからはスーパーなどで「どこで作られたものか(産地)」を少しだけ気にしてほしいなと思います。

なるべく自分が住んでいる地域や、近くの県で作られたものを選ぶことを「地産地消(ちさんちしょう)」と言います。
牛たちが身近なエコフィードを食べているのと同じように、運ぶ距離が短くなるため、環境への負担を減らす立派な「エコ活動」になります。

できるだけ身近な食を選ぶことの大切さが、少しでも皆さんに伝わったらうれしいです。

地元や近くの産地のものを選ぶことが「エコ活動」に
地元や近くの産地のものを選ぶことが「エコ活動」に


さて、今回は牛たちのごはんの中でも「エコフィード」にスポットを当ててご紹介しました。

外の世界に頼るだけでなく、身近なつながりを大切にする工夫。

でも、牛たちのごはんには、まだまだたくさんの工夫があります!

次回は、私の牧場でも手作りしている牛のごはん「デントコーン(コーンサイレージ)」についてたっぷりお伝えします。

お楽しみに!

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