【削蹄シリーズ 第1回 後編】「切りすぎない」「怖がらせない」削蹄がアニマルウェルフェアにつながる理由

削蹄シリーズ第2回後編 ウシのくらしを守る-削蹄師- きりすぎない こわがらせない

こんにちは!「milushi みるし」編集長の自称「酪農リスペクター」、ミルカウ姐です!🐄✨

前編では、削蹄(さくてい)は“ただ「ひづめ」を切る作業”なのではなく、観察と判断から始まる「足元メンテナンス」、そして“削蹄師は、まるでカリスマ美容師”、という話をお届けしました!

🌐【削蹄シリーズ 第1回 前編】牛の健康には“足元”がとっても大事!牛の「ひづめ」のネイリスト=削蹄(さくてい)師!

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん

引き続き今回も、削蹄師さんの研修・認証制度を実施している公益社団法人 日本装削蹄(そうさくてい)協会(以下、日本装削蹄協会)さんの、いまも現場で削蹄している削蹄師の阿部さんにお話しを伺った模様をお届けします。

「いい削蹄の“鉄則”」を阿部さんに教えてもらいましたので、みんなでカリスマ美容師 削蹄師の極意をのぞいてみましょう!

鉄則①:切りすぎないこと。削蹄でいちばん怖いのは“やりすぎ”

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
切り足りないなら、あとで直せる。でも切りすぎたら?

・・・それは戻せませんね。

牛の「ひづめ」をミルカウ姐の手で再現。
牛の「ひづめ」を手で再現
結構しんどかったです
(親指に該当するところは退化)

牛は「ひづめ」で立つ動物。

人間でいえば、“靴底”どころか、2本の指の爪先そのものに体重がかかっています。

今これを読んでいるそこのあなた。

「2本の指の爪先だけで歩かなきゃ死んじゃうルール」が急に世界に定められ、つい昨日、足の爪を深爪していたらどうします?

そんな状況でつま先だけで歩きたくないですよね?
でも歩かなきゃいけないんです。(ええ?)

それってどんな試練?
(そんなルールが設定されることは、たぶんないですけどね)

「ひづめ」を削りすぎて痛みが出るようになってしまったら

牛だって歩きたくないし、立つのがつらいし、ごはんは立って食べたいのに痛くてお腹いっぱい食べられないし、寝起きするときには体重をかけられないし、

日常生活の全部が嫌になっちゃう

…ミルシが言いたいこと、ミルカウ姐にぜんぶ言われたし…

前編でもご紹介しましたが、削蹄は、1本の脚だけを持ち上げて作業します。
すると「うまく切ったつもり」でも、体重がかかった時に想像通りになっていないことがあるそう。

その現象を、阿部さんは「人間は“正しくできている”という “錯覚”におちいりやすい」と指摘。

「いい削蹄の“鉄則”」①は、「切りすぎない」

だからこそ、削蹄師は作業の途中でも「脚を下ろして確認」して、思い込みをしないよう、客観的に見直すそうです。

こうした“検証”が、「いい削蹄」となって牛の足元を守るんですね。 

乳牛のひづめ 削蹄のビフォー・アフター全体像と削蹄ポイント

鉄則②:怖がらせないこと。牛にとっては「ちょっと怖いイベント」

もうひとつの「いい削蹄の“鉄則”」は、牛への接し方です。

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
牛からすれば、“よく知らない人”が、“嫌なことをしに来た”と思ってる。だからこそ、丁寧に接しないといけない。
知らない人が大声で急に手を触ってきたら怖いでしょ?それと同じ!

…それはめっちゃ怖いですねぇ。

街を歩いてたら、全然知らない美容師さんが急に髪を触ってきて、大声で

あーちょっとちょっと!!キミ~!髪伸びてるね!?あっちで切ろうか!ほらあそこ!座ったら動けなくなるやつあるから!さ、行くよ!

とか言い出して、手を引っ張られて謎のイスに連れて行かれて拘束される感じですよね?

全然知らない美容師さんが急に髪を触ってきて固定イスに連れて行こうとするイメージ

 いやいや怖い怖い。絶対行きたくない。

それはミルシも全力で逃げる案件だし…

「いい削蹄の“鉄則”」②。「驚かさずスピーディに」。

大声を出さず、急な動きをせず、静かに、丁寧に、できるだけ短時間で。
牛が怖がっているときほど、こちらが落ち着くこと。

この“人間側の姿勢”が、結果的に安全で正確な作業につながるそうです。

削蹄って、技術だけじゃなく、コミュニケーション(しかも相手は牛!)の仕事でもあるんですね。

削蹄は「治療」ではなくメンテナンス。治療は獣医さんへ!

ここも大事なポイントです。

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
「ひづめ」の病気を治すのは獣医さん。削蹄は、健康を維持するための仕事。

削蹄の現場では、牛の脚や「ひづめ」の異変に気づくことはできます。
「ひづめ」の状態や体重のかかり方から「これは獣医さんの診断が必要そうだ」と判断し、牧場側に伝える。

そうした“つなぎ役”として、とても重要です。

役割分担がはっきりしているからこそ、牛の健康を守るスピードが上がる。

削蹄師×獣医×牧場の連携は、牛にとって大きな安心につながります。

削蹄=アニマルウェルフェアの実践。そのまま“生産性”にもつながる

アニマルウェルフェア(動物福祉)というとちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、削蹄ではいたって優しいお話し。

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
牛は自分で「ひづめ」を整えられない。だから人が、痛みが出ないように整える。そのときは牛を怖がらせず、丁寧に扱う。

削蹄自体がアニマルウェルフェアなのです。

牛がラクに立ったり歩けるようになると、エサを食べたり水を飲んだり、寝起きの動作もストレスがなくなります。

どんな動きでも脚にストレスがなければ、元気に過ごせるし!

牛が元気でいれば、しぼるミルクの量が安定したり、元気な子牛を産むことができます。

ミルクの生産は酪農家さんの収入源。
子牛は将来ミルクを生産してくれる大事な存在。

つまり削蹄は、牛のためでもあり、酪農経営のためでもあるんですね。

まとめ(後編):足元が整うと、牛の毎日が変わる

削蹄は、牛の暮らしの“土台”を整える仕事。

大事なのは、切る技術、だけではなく、

・観察して判断すること
・切りすぎないこと
・牛を怖がらせないこと
・必要なら獣医さんにつなぐこと

という、ひとつひとつの積み重ねでした。


次回は、引き続き日本装削蹄協会さまに、「削蹄師の現状と課題」についてお話を伺います。

削蹄師を仕事にしている人の数や、地域差、育成の仕組みをまとめますのでお楽しみに!

それではみなさんご一緒に~!

Good Luck Know(ぐっどらくのう~)!♬👋


【取材協力・監修】
🌐公益社団法人 日本装削蹄協会(https://farriers.or.jp/)

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