【削蹄シリーズ 第1回 前編】牛の健康には“足元”がとっても大事!牛の「ひづめ」のネイリスト=削蹄(さくてい)師!

削蹄シリーズ第1回前編 牛のネイリスト-削蹄師- 健康は足元から!

こんにちは!「milushi みるし」編集長の自称「酪農リスペクター」、ミルカウ姐です!🐄✨

突然ですが、みなさんは牛の「ひづめ」をじっくり見たこと、ありますか?

ひづめね〜 毎日ひづめで立ってるし けっこう大事なとこなんだし~

牛の「ひづめ」は 人間でいうと“手足の爪先”です。
日本の乳牛の99%を占めるホルスタイン種のメスでは、体重が600~700kg!

🌐参考:一般社団法人Jミルク findNew 牛乳乳製品の知識 乳牛の体形や食事量

それを牛は4つの「あし」で支えているのですが、本当に支えているのはそれぞれのあしの先端にある2つの「ひづめ」。4つのあしの8つの「ひづめ」で、立つ・歩く・食べる・飲む・寝る—その全部を支えているんです。

8つのひづめで立ってる牛
8つのひづめで立ってるでしょ?
牛の「ひづめ」をミルカウ姐の手で再現。
牛の「ひづめ」をミルカウ姐の手で再現。結構しんどかった。

ミルカウ姐の手で表現すると、牛のあし先ってこうなってるんです。(イメージ図)

中指と薬指の指先だけで立ち、人差し指と小指は宙に浮いていて、親指は退化してるんですよー。

私たちは足の爪先をケガすると、運動も、歩くのも大変。指の爪先なら、字を書くことも、スマホ操作も大変になりますね。

牛は体重をすべて「ひづめ」にのせているわけですから、本当に大切な部分。

その大切な「ひづめ」のメンテナンスをすることを「削蹄(さくてい)、そのお仕事をする人を「削蹄師(さくていし)と呼んでいます。

つまり、牛のネイルケアネイリスト

牛さんだって爪はきれいにお手入れしたいはず!

ネイルって言われるとちょっと照れる~
 
でも、整えてもらえると歩きやすいんだし~

今回お話をうかがったのは、削蹄師さんの研修・認証制度を実施している公益社団法人 日本装削蹄(そうさくてい)協会(以下、日本装削蹄協会)さん。

協会の副会長でありながらも、現場で削蹄もしている削蹄師の阿部さんと、認定研修部長で獣医師の小野さんのお話、まずは前編として、削蹄と削蹄師さんについて、ざっくり教えていただきました!

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
日本装削蹄協会 認定研修部長 小野 圭一さん
日本装削蹄協会 認定研修部長 小野 圭一さん

「削蹄=「ひづめ」を切ること?」…いえいえ。“切る前”がいちばん重要なお仕事!

『削蹄は「ひづめ(爪先)」のメンテナンス』と聞くと、「ひづめを切ることがお仕事なのかな?」と想像するかもしれません。

もちろん、削蹄は「ひづめ」を切るお仕事。

ところが阿部さんは、「削蹄で一番大事なのは“切る前”の仕事だよ」と教えてくれました。

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
いきなり牛を固定して脚を上げても、いい削蹄はできない。自然に過ごしている状態の、体重がかかった“立っている状態”や“歩いている状態”をまず見ないと。

削蹄師は、まず自然な状態で牛が立っているところを見て、歩き方や姿勢、左右差、痛みがありそうかどうかを観察。その観察で「どこを、どれだけ削るか」が決めるそうです。

つまり削蹄は、“ただ「ひづめを切る」だけ”ではなく、“観察して「どう切るか」を決める”のがお仕事。

最後まで記事を読めば分かっていただけると思うのですが、この観察眼、めちゃくちゃすごいのです!

じろじろ見られてドキドキしちゃうけど、そのほうがあとからすごいラクだし~

「ひづめ」が伸びると、姿勢が変わる。だから“足元のメンテ”が効く

ところで、「ひづめ」ってどんな感じで伸びるのでしょう?

阿部さんの話では、育っている環境や栄養、運動量などで伸び方が変わるそうです。最近は栄養たっぷりのエサで「ひづめ」が伸びやすい傾向で、昔の感覚のまま放っておくと「気づいたら伸びすぎていた…」が起こりやすいとのこと。

なんだか最近歩きづらいな~って思ったら、「ひづめ」が伸びてたってこと、あるあるだし…

牛の「ひづめ」は、人の爪のように単に長く伸びていかないらしいです。

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
伸びたところは立体的に厚くなる。だから削蹄は、それを“平面”に戻していく作業なんです。

どういうことかというと…。

人の爪は薄くて、伸びると“平面で面積が広がっていく”イメージですよね。
でも牛の「ひづめ」は、もともと広い面で成り立っていて、伸びるとそれが積み重なって立体的になるのです。
「ひづめ」が伸びていくと、歩く時の癖や環境で、牛それぞれに違った形の立体になっていきます。

伸びた「ひづめ」の解説

「ひづめ」の角度が崩れると、牛の立ち方が変わります。姿勢が変わると、体重のかかり方もかたよって、別の「ひづめ」にムリがかかってしまう。だから削蹄で“土台”を整えることが、牛の暮らし全体のラクさにつながる、というわけです。

削蹄の流れ(ざっくり)。ポイントは「8つまとめて見る」

削蹄は、大まかに次のような流れで進みます。

1.    牛が傷つかないよう安全に固定する「保定(ほてい)」
2.    「ひづめ」の伸びた部分を整える「粗削(あらけず)り」
3.    「ひづめ」の底面を整えて“平ら”にする「削切(さくせつ)」
4.    「ひづめ」の角度とバランスを微調整(8本全体で調整)

…と簡単に書いていますが、ところがどっこい。

「単独保定」という1人で削蹄を行うスタイル
削蹄するとき、あしは1本ずつ

写真を見ていただくと分かるように、削蹄は牛を立たせて1本のあし毎に行います。

つまり、8つの「ひづめ」を同時に切ることはできないんです。

そして、牛の「ひづめ」は体重が乗るとその重さで形が変わるそう。
牛のあしを固定するのは、実はなかなか重労働。
一度削蹄したあしに戻ることは、なるべくやりたくない。
でも切ったあとの体重のかかり方は、足をおろして体重を乗せてみないと分からない!
さくっと進めるなら1つのあしは一発勝負!!

・・・想像しただけで難易度が高いんですがー⁉

日本装削蹄協会 副会長 阿部 優さん
阿部さん
だから、削蹄する前に牛それぞれの状態を充分に見ておく必要があるんだ。どうしてこういう「ひづめ」の形になったのか?どう切ってあげれば牛がラクになるのか?自然に過ごしている状態で観察して、どこを切るべきなのかを判断しておくんだ

なるほど、切らずに見極める。
そこが削蹄師の腕の見せどころなのですね!

からだを固定されるのは、短い時間のほうがありがたいし~

まとめ:削蹄は「牛の暮らしを整える」メンテナンス。削蹄師はカリスマ美容師⁉

削蹄は“ただ「ひづめを切る」だけ”ではなく、牛がラクに暮らすための“足元メンテナンス”。

日本装削蹄協会の小野さんは、

日本装削蹄協会 認定研修部長 小野 圭一さん
小野さん
削蹄師は美容師みたいなもの。その人に合ったスタイルを、その人の頭(牛なら脚や爪)の形に合わせて、理想の髪形を思い描いて切っていくのと一緒

と例えてくれました。
な・・・なんてわかりやすい・・・!

阿部さんが、切る前にカウンセリングを超絶丁寧に行う、大人気で予約が取れない表参道あたりのカリスマ美容師さんに見えてきました…!  

カリスマ削蹄師さん、牛にモテモテ
カリスマ削蹄師さん、牛にモテモテ

カウンセリングがバッチリな削蹄師さん、最高だし~

次回の後編では、カリスマ美容師 削蹄師の阿部さんが語る、“削蹄の2つの鉄則「切りすぎない」「怖がらせない」”を中心に、削蹄がアニマルウェルフェア(動物福祉)につながる理由や、獣医さんとの役割分担までを掘り下げます!

それではみなさんご一緒に~!

Good Luck Know(ぐっどらくのう~)!♬👋


【取材協力・監修】
🌐公益社団法人 日本装削蹄協会(https://farriers.or.jp/)

こちらの記事もいかがですか

前の記事へ

牧場が作る牛の「ごはん」!牛と畑がつくる、おどろきの無限ループ